歴史に学ぶ・第5回「時代に乗って爆死したロシア皇帝」

19世紀のロシアにアレクサンドル2世と言う皇帝がおりまして、この方は農奴解放令と言う布告を出したことで、世界史の教科書にもしっかり名前が載っている、大変有名な歴史人物です。ビジュアルもなかなかにスマートで格好良く、何しろ農奴を解放するなんて宣言をするわけだから、さぞかし国民に愛された偉大な皇帝かと思うわけですが、どういうわけだか国内のテロリストに爆殺されています。

その肝心な農奴解放令の内容なのですが、解放すると言って実際に農奴たちは解放されたものの、その後のサポートは厳しいもので、サポートというより多額の対価があるもので、大変負担が大きいものでした。それで結局彼らはどうして生きていけばいいかわからなかったわけです。前よりもひどい生活を強いられる人ばかりで、全体的な幸福度はむしろ下がったと言って良いでしょう。

なんでアレクサンドル2世がそんなことをしたかと言うと、当時のライバル国が次々産業革命で国力を伸ばしているのに、ロシアは後進国に甘んじていました。直近の戦争に負けたこともあり、国を古い体制から改めるよう、つまり国力増進のために行ったものであると言う事ですね。

しかしこの農奴解放令は思わぬ副産物を生みました。自由と言うものを与えられたロシア国の若者たちは、当時盛り上がっていた社会主義に熱狂し、ロシア国内でテロリストと化したのです。その頃にはダイナマイトが発明されていたので、アレクサンドル2世は乗っている列車を爆破されそうになったり、テロリストが入れるはずがなかった宮廷内で多数の犠牲者を出す爆破テロが起こったり、常に命を狙われるようになります。

結局アレクサンドル2世はフリニェヴィエツキという若者に殺されるのですが、時代に乗ったことで命まで取られるなんて、なかなか示唆に富んだ話だと思います。やっぱり丸投げは良くないですね。

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